連載コラム「CHRO対談」第5弾:アサヒグループジャパン株式会社
組織・経営に関わる人に向けた連載コラム
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CHRO対談
“おいしさと楽しさ”で世界に輝きを提供するアサヒグループが
人財マネジメント改革により人的資本を高度化
HRエグゼクティブコンソーシアム 代表 楠田祐氏の協力のもと企画された本対談では、採用や育成、評価、働き方改革、人的資本経営、DE&Iなど、企業の人事戦略・変革に関わるテーマを扱い、ビジネスコーチ株式会社エグゼクティブコーチ本部・部長の出口がさまざまな企業の経営者や人事部門の担当者と対談を実施。企業の経営者や管理職、経営企画、人事・教育などの組織・経営の業務に従事している方へ向けて、日ごろの業務やこれからの戦略策定におけるヒントをお届けします。
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アサヒスーパードライをはじめ三ツ矢サイダー、カルピス、ミンティアなど、人々においしさと楽しさを130年以上にわたってお届けしているアサヒグループ。日本の酒類、飲料、食品領域における強いブランドを持つだけでなく、欧州、豪州を中心に世界で数多くの酒類および飲料のブランドを展開しているグローバル企業です。グループ全体の経営を強化させている今、長年の日本型メンバーシップ人事を進化させ、グローバル含め、グループ経営人財として活躍できる日本人を増やすことが必須です。外資系企業の人事トップのキャリアを重ねてきた黒川華恵氏が、アサヒグループジャパンで取り組んでいる人財マネジメント改革による人的資本の高度化について伺いました。
執筆者

【プロフィール情報】
アサヒグループジャパン株式会社
常務執行役員
CHRO 兼 People & Culture本部長
黒川華恵(くろかわ・はなえ)

ビジネスコーチ株式会社グループ
エグゼクティブコーチ株式会社 代表取締役
出口亮輔(でぐち・りょうすけ)

ファシリテーター:
HRエグゼクティブコンソーシアム
代表 楠田祐(くすだ・ゆう)
日本発グローバルブランドのアサヒグループに必須のグループ経営人財の育成
楠田:本日は、明治時代から続くアサヒビールをはじめとした強いブランドを軸に世界展開しているアサヒグループの人財戦略について伺います。
出口:最初に、アサヒグループの経営体制と黒川さんの役割について教えていただけますか。
黒川:持株会社であるアサヒグループホールディングス株式会社がアサヒグループ全体のグローバル経営を行っています。アサヒグループジャパン株式会社は2022年に設立され、日本国内の事業を統括しています。傘下にアサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品等の事業会社があります。グローバルは欧州、オセアニア、東南アジアの4リージョン体制となっております。(2025年4月から欧州、アジアパシフィック、日本及び東アジアの3リージョン体制へ変更)私はアサヒグループジャパンでCHROとして日本事業全体の人事、社内広報、企業文化醸成をリードしております。
出口:アサヒグループの統合報告書(2024年)によると、アサヒグループの人財戦略として「人的資本の高度化」を掲げています。この取り組みを始めるきっかけはどのようなことだったのですか。
黒川:弊社の主力事業である酒類事業、飲料、食品事業は、日本の人口減少が確定しているなか、事業ポートフォリオの変革が急務です。アサヒグループでは、2000年代から積極的に海外事業を買収し、欧州、豪州地域を中心に世界に打って出てきました。すでにグループ全体の売上の約50%が海外から入ってくる状況となっており、未来に向けて持続的にグループの企業価値向上を実現する経営が最優先事項です。然しながら現状ではこのようなグループ経営ができる日本人が十分に育っていないという問題に直面しております。
出口:買収した海外の企業の人財と比較して、日本人が遅れてしまったということですか。
黒川:事業を経営するための力では決して劣っておりませんが、グローバルなグループ経営という観点においては遅れてしまったと認めざるを得ません。我々が買収した会社はグローバル企業の傘下で事業を行っていたそれぞれの地域のトップブランドなので、ヨーロッパやオセアニアではグループ経営が定着しておりその環境下においてグループ経営人財が育っています。日本ではアサヒビールで採用された大多数の人は基本アサヒビールでキャリアを積む。グループ間での異動も限定的でした。このような状況下においてはグループ経営人財はなかなか育ちません。覚悟を決めて門戸を広げ、海外に事業展開をしたのですから、日本発のアサヒというブランドでグループ経営の要職をより多くの日本の人財が担ってもらいたい、長きに渡り大切にしてきた日本経営の良さをグループ経営に生かしながらドライブしていくという姿を目指すには、能力の高い人財を見極め、かなりの早回しで必要な経験をさせながら育成をしなければならない状況なのです。
楠田:昭和の頃は、日本の4大ビールメーカーは国内でのシェア争いで新聞紙面をにぎわせていましたが、日本は少子化していく中、世界の人口は増えています。食品業界は地球人口80億人の人たちに自社商品を届けるグローバル化への道程を歩み出した。来年2026年は、21世紀の第2四半期に入ります。その未来に向けて、人の育成、マインド、カルチャーの3つを一緒に変革していく必要があるのではないでしょうか。
グループ各社の人事制度を統合。管理職を転籍させてグループ人事を開始
出口:今、経営陣のなかで次世代リーダーを育成するというコンセンサスを強烈にとっていくことに苦労されているケースが多くみられます。統合報告書を拝見して、御社の人的資本の高度化への取り組みは、綺麗ごとではなくて粘り強く積み重ねてきた印象がありますが、黒川さんは実際、どのように進めて来られたのですか。
黒川:最初は本当に苦労しました。私が当社に来たのは2023年2月ですが、その段階で人的資本経営を人事制度改革から着手することが決定されていました。
出口:人事制度は、その頃はどのような状態だったのですか。
黒川:当時は、グループ傘下の各企業がそれぞれ固有の人事制度を持ち運用していました。優秀な人財に事業会社の垣根を越え戦略的な異動を実施しようとすると、制度の違いが問題になる、強引に異動を実現させると、出向契約の手続きや人件費の付け替え等、膨大なオペレーションコストがかかります。だからと言って人事制度だけを変えても、さきほど楠田さんがおっしゃったように人財マネジメントのやり方、企業文化、社員のマインドセットを変えていかなければ会社は変わりません。ですから私は今のポジションに就任後、経営陣と何度も議論を重ね、管理職3000人の皆さんにアサヒグループジャパンに転籍していただき、人事制度を刷新しOne Asahiとしての一体感をドライブしてゆくことを合意し進めました。最初は反対意見も少なくはありませんでしたが、最終的にはこれが経営としての最適解であると全員が合意し実行した結果、99%の社員同意をもって転籍を伴う人事制度の統一を行いました。
出口:それは思い切った施策ですね。反対意見もあるなか、そこまでの合意を作っていかれた。素晴らしい実行力だと思います。
初の4時間のタレントレビューで経営陣が人財とお互いを深く理解
黒川:同時に進めたのがタレントを中心とした人財マネジメント改革です。まずはあまり乗り気でない経営陣を丁寧に説得してタレントレビューの導入からスタートしました。各事業で大変活躍している優秀な人財が「将来は経営者になりたい」という明確なキャリアビジョンを持っており、そしてそのために日々努力をされている場合でも会社の経営陣がその方の事を知らなかったらせっかくの人財が埋もれてしまいます。ハイポテンシャル人財がどこで何をやっていてどのように育っているかを会社の経営陣が把握をし、現場の上司と連携して人財マネジメントを行ってゆくことが非常に重要です。
出口:タレントレビューはグローバル企業では当然のごとく行われていますが、御社では初めてだったのですか。
黒川:はい。日本においては初めてでした。まず当社の経営陣約15名に「タレントレビューをやります」と提案し、スケジュールを4時間押さえました。「経営陣はかなり忙しいのに、人事案件でこんなに長時間使うのは困る」と反対されたり、社長からも「皆がこんなに長時間一体何をするのかと心配しているが大丈夫か?」とご指摘を受けましたが、私は経営者の最も重要な仕事の一つは人財にエネルギーと時間を使うことだと信じているので、押し切りました。
出口:準備はどのようにされたのですか。
黒川:当社独自に開発したポテンシャルモデルと過去の業績によって人財をグレード毎に9ボックスにプロットします。これと同時にタレントプロファイル作成します。プロファイルを自動作成できるタレントマネジメントシステムが無いので、人事スタッフがパワーポイントで写真とその人の強み、弱み、上司からのコメントなどを入れ、すべて手作業で作成しました。
出口:人事スタッフの皆さんは大変でしたね。
黒川:はい、頑張って作ってくれました。最初はアサヒグループジャパンの次世代の経営者人財についてのタレントレビュー会議で、アサヒグループジャパン執行役員全員、グループホールディングスからCFO、CPO(Chief People Officer)、主要事業会社3社の社長と人事担当役員、人事部長が参加しました。作成したプロファイルを壁にずらっと貼って、それぞれポストイットを持って、プロファイルを見た感想や気づきを書いて貼っていってもらいました。それをベースにして、一人一人について、座ったままでなく歩き回って4時間かけて議論しました。
出口:みなさん、興味を持たれましたか。
黒川:タレントの話となりますと、とても真剣で盛り上がります。経営陣は、特にこれからの未来をつくる人財については育成したいと心から思っていますから。
最初は反対も疑問もありましたがタレントレビューの初回を経験後は皆さん、タレントレビューの良さをわかっていただけ「次はいつやるの?」と参加者から催促がくるようにもなりました。その結果昨年1年間で日本リージョンとグローバル合わせて7回もタレントレビューをやりました。これは流石に多いです(笑)。
出口:最初は文句を言っていたのに、すっかり気に入って、たくさん実施したのですね。
経営者人財の議論から役員登用と有効な異動も実現
出口:最初のタレントレビューの対象は、役員以下の階層だったのですか。
黒川:はい。本部長、部長、一部の課長です。対象人数がそれなりにいますので、ポテンシャルとパフォーマンス2軸の上中下で9Blockを作って、特にポテンシャルが高いブロックに入っている人たちについて共有しました。そこに2年以上同じロールの人が何人もいるし、中には4年以上同じポジションに滞留している方もいて「この人、優秀ですよね」と言っている。つまり上げたくても上げられない理由があるわけです。そしたら、社長陣はじめトップ層の方々が、「この人の上が詰まっているが問題なのでは? そこを何とかしなければ」と言い出してくださったのです。
出口:それはいい流れですね。
黒川:外から来た私がそう言っても聞いてくれないと思いますが、ご自分たちで気づいてくださった。それでかなりのガッツを持って6月に選抜人財に関しての異動案を決め、9月に半分ぐらいを実行し、残りは対応策をその場で決めました。
出口:日本の企業は現場に引き留められたり、新陳代謝が進まなくて抜擢が難しいところがありますが、そこをやり抜いたのですね。
黒川:社長陣が自らアクションをスタートして下さり、次期役員人事も協力して進めることができました。
出口:黒川さんの突破力で風穴を空けられたのだと思います。外から見ると、人事改革が整然と、しかも熱量高く行われように見えますが、内情はいろいろなドラマがあったのですね。
黒川:そうなんです。ドラマがあって、今、ものすごく熱量が高いです。
楠田:これまでの幹部の皆さんは、自分たちはそういう形で育ててもらっていないけれど、黒川さんのやり方の方が、これからの時代にはいいのかもしれない、と感じたと思います。海外の人たちと一緒に人財マネジメントできるように、早く変えておく方がいいと気づいたでしょうね。
人財育成に経営陣を巻き込むには、場を設定して決定者・育成者になってもらう
出口:経営陣の巻き込みに苦労されている企業の皆様にアドバイスするとしたら、どんなことがありますか。
黒川:経営陣で人に興味が無い人はいないと思います。逆にいたとしたら、経営者の資質として問題です。社員に興味を持ち、社員を大事にして、社員にエネルギーと時間を使うことは経営者として最も重要な仕事と言い切ってもよいと思っております。社員を成長させ大事にすれば、その社員がお客様も事業もしっかりとケアしてくれます。トップ経営陣としてやらなければならないことは、社員をいかに輝かせるか、未来の人財をつくるためにどれだけ時間を使うかだと思います。その気持ちは絶対にあるはずなので、それを尊重して、彼らに決めていただくのが良いと思います。
出口:そのきっかけと場づくりですね。
黒川:最初が肝心です。各部署でそれぞれにやっているから良い、ではなくて、部署をまたいで経営陣が集う場を敢えて設定して、タレントレビューを体験、経験していただくことが大事だと思いました。日本の会社は経営会議がすごく儀式的で、事前に裏で回って会議にはハレーションが起きないようにする。その場で喧々諤々議論しないですよね。だから本当に経営陣が腹を割って話しをする機会がそんなに無い。でも私は、そういう議論をする時間が大事だと思います。人を題材にして議論すると、人に対する見方、考え方をお互いに聞いて理解することができるので、組織にとってものすごく有効なのです。
出口:パワーが要りますが、最初が大事ですね。アドバイスは他にもありますか。
黒川:もう一つのTIPSとしては、選抜型人財育成プログラムに社長・役員を巻き込むことです。当社は従来、研修を外部にお任せしていたのですが、それだと勿体ないです。当然、当社の中に無い知見は外部にご支援いただきますけれども、例えば3か年の経営戦略やビジネスファイナンスなどは、役員が自分で教えればいいと思うのです。
出口:なるほど。
黒川:ですので、経営陣に「リーダーシップ・デベロップメント・プログラムをやりますので講師をお願いします」と頼んだら、皆さん「喜んで!」と快諾して下さり、2-3時間のトレーニングコンテンツも素晴らしいレベルのものを自ら開発して下さいました。これは新たな発見でしたし、アサヒグループはすごいな、と思いました。みなさん休日返上で時間をかけてコンテンツを作ってくださり、どのセッションもかなり高い質のものでした。
さらにプログラムでは、4社長に来ていただいてクロスビジネスのラウンドテーブルも開催しました。グループ各社の受講者からは、「自分の事業会社の社長の話に加え、多用な視点を持った社長たちの話が聞けてすごくよかった」「いろんな社長とコネクトする機会ができた」と好評でした。社長側も「他の事業会社にもこんな人財がいるんだ」と知ることができて喜ばれました。
出口:双方にとってメリットが大きいですね。
黒川:受講者には役員が行ったトレーニングを詰め込んで、そのあとすぐアウトプットして社長陣の前で発表してもらったら、これまたビックリするような良い提案を出してくれました。
楠田:育成プログラムの中に経営陣と選抜人財の対話の場も組み込んだのですね。日本企業に共通すると思うのですが、直属上司が優秀な人財を私物化しがちで、それが優秀な若手の成長の足枷になっています。アサヒグループでは、それが起きない文化ができつつありますね。
黒川:「ご意見は聞きますけど、囲い込みはダメですよ」と徐々になってきて、結構協力してくださるようになりました。
楠田:この変化は、単に人事制度を変えただけでは得られません。経営陣のマインドと組織のカルチャーを一緒に動かしてきたからこそだと思います。
グループ・ケイパビリティの基礎固めとして機能組織図とJDをスピード構築
楠田:ここまで次世代経営人財の育成について伺ってきました。個社別だった人事制度をアサヒグループジャパンの管理職人財制度に統合して優秀人財を見える化し、経営トップがコミットして次世代経営人財を育成する仕組みを、ものすごいスピードで構築されたことが理解できました。次に、人財戦略の柱として挙げていらっしゃるケイパビリティの獲得についてお伺いしましょう。
出口:『中長期経営方針』の達成に必要となるケイパビリティの獲得に向けて推進していらっしゃるとのことですが、組織における必要スキルや経験の定義を、どのように行っているのですか。
黒川:まずアサヒグループホールディングス(AGH)で、グループ経営ケイパビリティ構築のプロジェクトがスタートしました。世界中のエグゼクティブにインタビューをして、例えばマルチビバレッジ、グローバルマーケティング、人財育成など、主要なケイパビリティを抽出しているところです。アサヒグループジャパンはAGHと連携するのですが、すぐには同じレベルには行けず、基礎固めが必要でした。
出口:具体的には、どのようなことでしょうか。
黒川:人事制度を改定した時に、ジョブディスクリプション(JD)がなかったのです。組織図も役職名とその人がやっていることが記載されたリストがあるだけで、組織の機能と定義が示された機能組織図が無いのです。ですから現場の若手と話しをすると、「将来、こういう役職になりたいけれど、それをするにはどのような職務要件があって、どういうスキルが必要なのかが全くわかりません」という状態なわけです。
出口:それでは一人一人がキャリアオーナーシップを持つことができませんね。
黒川:おっしゃる通りです。エンゲージメントサーベイでも、職務要件定義、すなわちジョブディスクリプションが必要だという声が上がっていました。それでJDを作りましょう、となったのです。
出口:こちらも大変な仕事でしたでしょう。
黒川:最初は「JDって何?」と言っていましたが、理解してやるとなると早い。あっという間に管理職以上のJDが問題なくできました。アサヒって本当にすごい。スイッチが入ると、みんなでバーッと走るんです。
出口:驚きのスピードですね。
黒川:今は、「私のスキルを測ってもらっていません」という声が出てきています。ここもIT投資をして、自分のスキルと目指すスキルの見える化をしてギャップを埋めていく施策をしてきたい。そうすると、キャリアカンバセーションも加速するし、上司の支援の精度が上がると思います。
出口:機能組織図、JD、個人のスキルの見える化ができたら、アサヒグループジャパンのケイパビリティの定義やその育成も、素早くできそうですね。
部下に気づきを与えるリーダーシップを育成する管理職の能力開発
楠田:黒川さんが実施されてきた施策によって、階層的な人財育成よりも、個々にフォーカスしてポテンシャルを見ながら配置や育成をしていく方向に変革していると思います。人の成長については、誰が見ていくのですか。
黒川:2つあって、1つ目はHRが全体を見てコーディネートし、経営陣とつないでいくことです。2つ目は、管理職が部下をしっかり見ていくことです。そのために今、管理職の能力開発を行っています。自分の部下はリソースではなくて、投資をしたら伸びるキャピタルだという意識の醸成と、従来の上意下達=コマンドコントロールスタイルの管理ではなくて、部下に気づきを与えて横からサポートするリーダーシップの研修を行っています。
楠田:コマンドコントロール型ですと、社内調整しかできないリーダーになってしまいますよね。
黒川:私たちが未来に向けて欲しい人財は、「ボスはああ言っているけれど、本当にそうかな。もしかしたらもっといいやり方があるのでは。よく考えて、部下にも聞いてみよう」と違うアイデアを出し、「社長、こうするともっと良くなると思います」と提案ができる人です。
楠田:そこに行くには、会社全体に心理的安全性が必要です。
黒川:経営層のスタイルから変えていかなくてはいけません。「Do this」ではなくて、「What do you think?」のリーダーをどれだけ作れるかだと思います。
出口:最後に、人事としての今後の展望をお聞かせください。
黒川:人財マネジメント改革を定着させつつ、いろいろな階層の社員が、「会社が変わったな。事業が変わったな」と体感できるところまで持っていきたいです。もう一つ、当社代表取締役兼CEOの濱田がダイバーシティの観点から「黒と白を混ぜて灰色になるのではなくて、黒と白を掛け合わせてプラチナになってキラキラと輝いてほしい」とよく言っています。グローバル企業として変わっていかなければならないことがたくさんありますが、同時に、歴史ある日本の企業として変えるべきでないこともあります。そのアサヒらしさを大切にして、グローバルに輝く人財を育成していきたいです。
楠田:今日は黒川さんのお話を伺って、重要な観点が人的資本=ヒューマンキャピタルからソーシャルキャピタル、さらには心理的安全性のサイコロジカルキャピタルへと拡張していると感じました。イノベーションは発明ではなく、異なるアイデアが融合することだと言われます。アサヒグループでは数々の人事改革によって、イノベーションを加速する環境が整ったのではないでしょうか。今後のグローバル成長を期待しています。
本日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
(キャプション) 左:出口亮輔氏 中左:黒川華恵氏 中右:楠田祐氏 右:杉本博史氏
(執筆者:丸島 美奈子 / 写真提供者:武田 昌盛)