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東京海上日動システムズ株式会社

お客様に聞く(女性活躍推進 自己変革研修)ー 東京海上日動システムズ株式会社ー

女性社員のマインド変革と、管理職としてのスキル習得で「女性管理職比率3割」へ

左から東京海上日動システムズ株式会社 常務取締役 小林 賢也 氏、経営企画部 課長代理 木村 有希 氏

「女性管理職比率3割」に向けた取り組み

クライアント企業情報

東京海上日動システムズ株式会社

東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命保険等、東京海上グループの情報システムを企画・提案・設計・開発・保守・運用。売上高197億8000万円(2021年3月期)。社員数1410名(男性945名、女性465名/2021年4月1日現在)。

ご担当者様

小林 賢也 氏:常務取締役
1989年新卒入社。インフラエンジニアとしてシステム開発やアプリケーション開発に携わる。2003年に経営企画部へ異動し、親会社合併に伴うシステム会社の再編、新会社設立を推進。その後、ITサービス管理部、インフラ部門、アプリケーション開発部門の本部長を経て、現在は常務取締役としてコーポレート部門とデジタルイノベーション本部を管掌。

木村 有希 氏:経営企画部 課長代理
2000年新卒入社。IT関連のヘルプデスク業務や運用業務、セキュリティ、アウトソーシング管理などに携わる。出産と育児休暇を経て復職。現在は経営企画部で組織開発と個人のキャリア開発にアプローチしている。

お客様の課題・ご要望

  • 主任クラスの女性のキャリアの促進
  • 企業経営の観点から、全社員が成長して行ける環境整備
  • 女性の管理職比率の向上

ビジネスコーチの提案・サポート

  • 女性向けの自己変革研修
  • フォローアップ研修

はじめに

女性活躍推進が社会の大きなテーマとなる中、政府は民間企業や官公庁などで働く課長級以上の女性管理職比率を30パーセントにする目標を掲げています。一方では、大企業にあっても女性管理職の比率がなかなか高まらない状況が続いています。

東京海上日動システムズ株式会社は、「IT人材が男女に関わらず活躍できる」組織を目指し、女性管理職の比率を高めることを経営課題として取り組んでいます。その一環としてビジネスコーチとともに実施したのが、女性社員のキャリア意識を変える「自己変革研修」です。その取り組み内容と、同社の女性活躍推進に向けた思いを伺いました。

自己変革研修導入の背景:なぜ男性ばかりが管理職になるのか

――貴社は長年にわたり女性活躍推進に力を入れてきたと伺いました。これまでの取り組みについてお聞かせください。

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小林氏:女性活躍推進は、東京海上グループ全体で注力しています。その中でも当社は、IT人材として男女に関わらず同じエンジニアとして活躍してもらえる体制を整えてきました。

当社はかつて総合職と一般職で採用を分けていた時代があったのです。一般職として入社するのは短大卒の女性が多く、主にシステム開発の下流工程や運用業務に携わっていました。そうした体制を2000年に見直し、一般職の社員には総合職に転換してもらい、全員を総合職として採用・配置して、エンジニアとしてのキャリアを積んでもらえるようにしました。

木村氏:女性が働きやすい環境は整っていると思います。妊娠や出産のタイミングで辞める女性社員はゼロで、育児休業からの復帰率は100パーセント。私もそのひとりです。復帰後は元の部署に原則戻れるので、キャリアの切れ目を感じることなく仕事を続けられます。

――そうした中で、なぜ女性のキャリア開発をテーマとした研修を企画したのでしょうか。

小林氏:会社全体での男女比率は7:3なのですが、これが管理職になると9:1と、圧倒的に女性が少数となっています。管理職のうち女性が1割しかいない。ここに課題を感じ、原因を探ってきました。性別に関わらずフラットに人事考課を進めても、結果的に管理職を目指したいと思う人材は男性が多いという事実もありました。女性社員が持つキャリアイメージにも、原因の一端があるのではないかと考えたのです。

木村氏:若いうちは優秀だと評価されていた女性社員が、管理職の一歩手前でペースダウンしてしまうことも少なくありません。今までは出産後の一時期に仕事を離れることによる影響だと考えられていた面がありました。しかし、出産を経て働く当事者としては、それだけが原因ではないようにも感じていました。女性といってもそれぞれのバックグラウンドは多様であるし、マインドの問題やライフイベントの影響だけではなくもっと本質的な課題があるのかもしれないと。

――導入した研修は、女性のリーダーシップ研究の第一人者として知られるサリー・ヘルゲセン氏の著書『コーチングの神様が教える「できる女」の法則』(日本経済新聞社)に基づくプログラム。キャリアアップを阻害する「女性特有の12の悪癖」を考える内容でした。

小林氏:私たちの課題意識にヒントを与えてくれたのがこの本でした。若いうちは男女ともに成果が変わらないのに、なぜ男性ばかりがキャリアアップしていくのか。女性の中にも何かしらのバイアスがあるのではないか。それなら、女性社員本人に、組織で仕事をする上での女性の特性と向き合ってみてほしいと考えたのです。

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研修で使用している、サリー・ヘルゲセン氏の著書『コーチングの神様が教える「できる女」の法則』(日本経済新聞社)

木村氏:この本には、男性が築いてきた社会の中で、女性がうまく振る舞っていくための方法が書かれています。実際に女性管理職にインタビューをすると、本の中で「12の悪癖」として紹介されている特性と向き合い、場合によっては克服しながらキャリアを築いていることが分かりました。そうした意味では、多くの女性社員の参考になるのではないかと思っていました。

自己変革研修のアイデア:研修を効果的に進めるための「3つの工夫」

――2019年に開催した1回目の研修では、手挙げ方式にも関わらず多くの希望者が参加したと伺いました

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木村氏:管理職の手前の段階であるシニアエンジニア(主任クラス)の女性を対象に参加者を募りました。2019年の1回目には57名が参加し、口コミが広がってその後も希望者が増えたため、追加開催しています。「変わりたいけれど、何をやればいいのか分からない」という思いを持つ女性社員が多かったのかもしれません。

シニアエンジニアは、下は20代から上は50代までと幅広く、育児や介護など向き合っている環境もさまざまです。ライフプランやキャリアプランに関する研修を行うとともに、今回のプログラムを「自己変革研修」として提供しました。結果的に、3つの研修の中で最も満足度の高いプログラムとなりました。

――自己変革研修の企画にあたって工夫した点を教えてください。

木村氏:大きく3つあります。

まずは講師に、書籍の中で使われている「悪癖」という言葉を一切使わないでほしいとお願いしました。この言葉が書籍に登場する意図は理解していますし、効果的な響きを持っているとは思うのですが、研修で「悪癖」という言葉を使うと女性社員の捉え方に影響があると感じたのです。中には「男性のようになれということ?」と、反感を持ってしまう人もいるかもしれません。そこで、「特性」という言葉に言い換えることにしました。

2つ目は、男性管理職にオブザーバーとして参加してもらったことです。男性側の意見を反映させることで、女性の特性についての理解がより深まるのではないかと考えました。たとえば本にある「成果を主張しない」という特性は、女性からすると「自分から積極的にアピールするのは傲慢である」という感覚を持つ人が一定数います。これは、「女性として生きる・育つ」影響だと著者はいいます。育てられ方、社会での立ち位置から、女性ならではの特性が形成されてしまうものだと記されていました。

でも男性管理職は「ビジネスパーソンとして成果を報告するのは当然の義務だよね」と、さらりと言ってくれるんですよね。そうした言葉でハッとする参加者も多かったと感じています。

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そして3つ目に「フォローアップ研修」。特性を克服するのは1日の研修だけでは難しいので、フォローアップを実施しました。特性を克服した人や、今も挑戦している人などを招いて、本音で話してもらうパネルディスカッションを行っています。また、フォローアップ研修の時期が12月だったので、クリスマスカードを作って参加者それぞれの目標を書いてもらう取り組みも行いました。「あの年のクリスマスに目標を立てたんだ」と、季節感があることで記憶や定着につながりやすくなるのではないかと考えたのです。

研修の効果と今後の取り組み:管理職に求められる実践力を「男性役員」から学ぶ

――現時点で、研修実施による効果をどのように感じていますか?

小林氏:今回の自己変革研修以外のプログラムも含めた成果となりますが、2021年時点で、管理職の一歩手前の段階である「課長代理」の女性割合が24パーセントに上っています。2020年は21パーセント、それ以前は10パーセント台だったので、この比率は一気に高まってきているのです。ちなみにこの数字は、当社の中期経営計画のKGIとしても設定しており、全社的に非常に注視しています。

木村氏:課長代理になると、一気にやりがいが増えていくんですよね。その手前のシニアエンジニア(主任クラス)とは違い、リーダーとしてマネジメントを担っていくことになります。その意味では、課長代理になる女性が増えることは、管理職の女性比率を高めていくことに直結していくのだと思います。

――今後の展望や、ご予定されている施策・取り組みについてもお聞かせください。

小林氏:管理職の女性比率については、社内全体の割合と同じ「3割」まで高めることを目標にしています。そのためには、現在課長職を務めている女性社員をさらに引き上げていくことも必要です。組織長を目指し、視座を高めて会社全体を考えられるようになるためのプログラムを実施していきたいと考えています。

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これから組織長を担ってほしい女性社員については、マインドの変化だけでなく実践力、“How”の部分を身につけてもらうことも大切です。組織の中で結果を出すには、いわゆる「社内政治」も含めたHowが必要となるはず。これまではなかなか明文化できなかったノウハウですが、効果的に学べる体制を作っていきたいと考えています。

――「組織の中でどのように振る舞っていくのか」も含めた実践力が必要であると。しかし、これを体系的に教えるのは簡単ではなさそうです。

木村氏:おっしゃる通りです。かつての男性管理職は、こうした力を「飲み会」や「たばこ部屋」などOJTや仕事以外の場を通じて非形式的に教えられてきており、この“ボーイズ・ネットワーク”がジェンダーギャップの一因ではないかと考えています。女性にもそうした場がまったくなかったわけではありませんが、機会として選択してこなかった人が多いのが事実。そこで、男性役員がメンターとなって、女性管理職に対し、自分達が培ってきた「仕事の進め方」についてのスキルを伝えることにしたのです。

たとえば、男性が自然と立ち振る舞うビジネススキルからの学びのひとつに「ランチタイムの活かし方」があります。女性は仲の良い人たち同士でランチタイムを過ごすことが多いですが、男性は上司や管理職と積極的にランチに行く人も多い。結果、ランチを通じてさまざまな人と交流するタイプの男性は、新しい部署に移っても馴染むのが早く、「意見を通すためには誰と交渉すればいいのか」といった組織文脈の理解も早くなるのだと。

上司や管理職とランチに行ってください、と言いたいわけではありません。ただ、管理職、そしてその先を目指す女性にとって、誰と、どのタイミングで、どのようにコミュニケーションを取るのか、という点での貴重な知恵であることは間違いないと思います。

研修プログラムを「お任せ」するのではなく、一緒に築き上げる

――貴重なノウハウをいただきありがとうございます。最後に、今回の研修プログラム導入のパートナーとしてビジネスコーチを選んだ理由をお聞かせください。

小林氏:第一に、『コーチングの神様が教える「できる女」の法則』を題材にした研修を企画したかったという動機があります。これができるのはビジネスコーチだけでした。講師は豊富なキャリアを持ち、ご自身のリアルな経験をもとに話してくれたので、参加者も前向きに研修に参加できたのではないかと思います。

木村氏:ビジネスコーチに相談して、打ち合わせを重ねていく中では、私たちの思いをくみ取って柔軟にプログラムを設計していただきました。先ほどもお話ししたように、研修の内容や使う言葉ひとつをとっても、ビジネスコーチとたくさん議論を重ねて作り上げていきました。研修プログラムをただお任せするだけではなく、私たちがやりたいことをしっかりぶつけることができる。そうやって一緒に築き上げていったからこそ、リアルな研修を実現できたのだと感じています。

――ありがとうございました!

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