キャリア自律と従業員体験の関係性(要約版)
企業成長のカギは「キャリア自律」。従業員体験向上のための支援策とは?
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その他
本コラムは、コラム「キャリア自律と従業員体験の関係性」の要約版です。
近年、従業員一人ひとりが主体的にキャリアを築く「キャリア自律」に対する注目度が高まっています。本記事では、株式会社SP総研の民岡 良氏にインタビューを行い、キャリア自律を支援することがどのように従業員体験(Employee Experience, EX)向上につながるのか、その関係性を探ります。
【本記事のポイント】
〇従業員体験の向上に、キャリア自律の支援が大きな影響を与える。このキャリア自律の支援において、従来のキャリア成長モデルから、
柔軟なキャリア選択を可能にする「キャリアマップ」への移行を提唱。
〇1on1の高度化やHRテクノロジーの活用により、従業員のスキルを具体的に可視化し意義ある仕事(Meaningful Work)の実現を
図ることで、従業員の成長の機会を促すだけでなく、企業の競争力向上にも直結する。
執筆者

ビジネスコーチグループ B-Connect株式会社
ビジネスコーチ編集チーム
松村 若奈
キャリア自律と従業員体験の関係性(要約版)
近年、企業の競争力向上には、従業員の主体的なキャリア形成、すなわち「キャリア自律」の支援が不可欠となっています。そして、このキャリア自律を促すための支援は、「従業員体験(Employee Experience, EX)」の向上に大きな影響を及ぼします。
従業員体験とは、従業員が企業での業務を通じて得るすべての体験のこと。エンゲージメントや生産性の向上、パフォーマンス発揮やリテンション(人材維持)に直結し、企業の人的資本経営を支える重要な要素です。この従業員体験の向上が従業員の成長を促し、組織全体の競争力向上につながります。
そしてこの従業員体験を最も向上させる効果的なアプローチが、キャリア自律の支援だと民岡氏は考えています。
しかしキャリア自律の支援において、従来のキャリア成長モデルは、1つの職種に求められるスキルを定義し、そのスキルを身につけることでキャリアアップを図る仕組み。そのため、昇進の機会が限られ、キャリアの選択肢が狭まるという課題がありました。そこで民岡氏は、新たなアプローチとして「全ての従業員にキャリアに関してのGPS(キャリアGPS)を持たせて『キャリアマップ』を可能な限り拡げてあげる」という考え方を提唱しています。
これは、従業員に「キャリアGPS」を持たせることで、キャリアにおける今の自分の位置を正確に把握しながら、柔軟なキャリア選択や異分野への挑戦を可能にする仕組みです。スキルの2~3割は異分野でも活用可能と言われており、適切な支援があれば、異なる職種への挑戦も可能になります。この仕組みにより、従業員は自らの適性や関心に基づき、多様なキャリアを選択できるようになります。
このキャリア自律を支援する上で重要な施策のひとつが「1on1」の高度化です。
しかし、多くの企業では1on1が単なる雑談に終始し、効果を十分に発揮できていません。これを解決するために、「セルフジョブ定義」という手法を活用し、従業員自身に「自分の仕事とは何か?」を主観かつ自由な言葉で言語化させることが有効です。さらに、HRテクノロジーを活用してスキルを可視化し、キャリアの方向性をデータに基づいて示すことで、従業員のキャリア自律をより実現しやすくなります。
また、「意義ある仕事(Meaningful Work)」と思えるような状態を生み出すことも、従業員体験を向上させる要素のひとつ。これは自分の持ち味や強みをフルに活かせていると感じる状態を指し、スキルの棚卸しと可視化、スキルベースでのジョブ定義を行うことで、従業員は自身の仕事の価値やそれに対する貢献を実感しやすくなります。これにより、モチベーションの向上や、企業へのエンゲージメントが高まり、結果として人材の定着や生産性向上につながるのです。
企業が成長し続けるためには、従業員体験の向上が欠かせず、その鍵を握るのがキャリア自律の支援です。
1on1の高度化やHRテクノロジーの活用により、従業員が自身のキャリアを主体的に描ける環境を整えることで、企業全体の競争力向上へとつながるのです。
⇒「キャリア自律と従業員体験の関係性」の全文はこちら
【民岡氏プロフィール】 1996年慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本オラクル、SAPジャパン、日本アイ・ビー・エム、ウイングアーク1stを経て2021年5月に(株) S P総研 代表取締役に就任。現在は「持続可能な働き方」を追求するためのコンサルティングサービスを提供しており、「人的資本開示」(ISO 30414)に関する取り組みについても造詣が深い。日本企業の人事部におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル定義を促進させるための啓蒙活動にも従事。 著書に『HRテクノロジーで人事が変わる』(共著、労務行政、2018年)、『経営戦略としての人的資本開示』『戦略的人的資本の開示』(共著、日本能率協会マネジメントセンター、2022年)、『現代の人事の最新課題』(共著、税務経理協会、2022年) 、『最新のHRテクノロジーを活用した 人的資本経営時代の持続可能な働き方』(すばる舎、2024年)等がある。「ビジネスガイド」(日本法令)等への寄稿、ならびに、労政時報セミナー、HR Summit、日経Human Capital、HRカンファレンス等、登壇実績多数。 |